ACITA(人工内耳友の会)主催「人工内耳の日」記念講演会 [2024/9/22]

2024年9月22日、コクレア/メドエル/AB各社協賛、ACITA主催による講演会について、Xで投稿させていただいた内容をまとめました。初めにお断りとなりますが、本記事はACITAや講演者の許可なく、私の方で勝手にまとめたものです。内容の誤りはすべて私に起因するものです。個人の感想としての扱いとさせてください。また、予告なく本記事を修正・削除する場合があります。

情報保障:パソコン要約筆記、ヒアリングループ
ACITAの紹介:3/3 耳の日、6/6 補聴器の日、9/9 人工内耳の日に啓蒙活動を実施

  • ACITAから「人工内耳の仕組み」というテーマで話をいただいた。ACITA発足 36周年(1988年)おめでとうございます
  • 人が持つ音の分析の仕組み  「サー」という音は「−−ス さ あ−−」と分解され、最初の「−−ス」は4000Hzと8000Hz、「あ−−」は1000Hzを多く含む  「めまい」は、最初の「め」は2000Hzを多く含み、これが聞こえないと「みまい」と聞きこえる  周波数の組み合わせが大事になる
  • 聞き間違いの傾向
    「ね」、「で」、「せ」、「ち」、「だ」の聞き間違いが多い
  • 人工内耳の刺激の仕方 細かい刺激(位置)/ 頻度 / タイミングが大事  
    – 周波数に応じて刺激すべき蝸牛位置が変わる  
    – 周波数が低いと蝸牛の奥まで届く、周波数が高いと蝸牛の入口まで  
    – 電極間の刺激の割合を変えると電極間の周波数をも刺激できる
     AB社のCIの場合、120チャンネル(電極数分の周波数しか刺激できないというわけではない)
    – 頻度も大事、刺激数が多いと解像度が上がって細かい聞き分けができる
  • (メドエルの人工内耳の説明の中で) 遺伝子治療 人工内耳から遺伝子治療薬を入れるなどに対応した電極の開発をしている
  • 最近のトピックス
    スピーチプロセッサのアップグレード指針が変更された 破損していない場合の機種交換
    – 従来:✖  2024年6月〜:○
    – 医学的な適用条件あり:
    ・使用しているスピーチプロセッサで、単語検査(CI2004)の静寂下の明瞭度が80%以下のものが、新機種で8%以上の正答率の改善が得られた場合
    ・同一のスピーチプロセッサを継続的に装用した期間が5年以上

ABの前身のクラリオン人工内耳から携わられていたお話など大変興味深いものでした。
また、様々な周波数の聞こえの違いを先生自ら「ぷーぷーぷー」「ぷぷぷぷぷ」などと発声しながら、感覚的にも大変分かりやすい説明でした。一方でこれを要約筆記することは困難であり、このあたりのニュアンスが耳から入ってこない参加者の方へは伝わらなかったかもしれません。この辺りは、主催側もどうすれば先生の説明が伝わるかを事前に検討し、参加者全員にそのニュアンスが伝わる工夫ができればと感じました。

  • 人工内耳のマッピング  聞こえ方に正解・不正解はないので、自分にとってより良いマップにしていきましょう
  • 人工内耳の音の入る範囲(IDR:インプット・ダイナミックレンジ)  
    – メドエル:55dBで変化(15-95の間で)
    – コクレア:40dB(30-70)
    – AB:最大80dB
  • 小さい音(20dB以下)は入らない。大きい音は圧縮される
    装用閾値が不適切だと、大きい音が歪んでしまう / 小さい音が聞き取りにくくなってしまう
  • 音入れ後(初期)に大切なこと
    ①毎日装用する
    – 負担があれば、時間を決めて装用
    ②環境音をきく  
     - 周りの人に何の音か教えてもらう  
    – 生活音などよく聞く音は繰り返し聞いて学習  
    – 外出時にも音を聞く  
      – 音の違い(水の音vs掃除機など)を聞く
    ③静かな場所で1対1の会話をする  
      – はじめは口元を見て、慣れたら口元を見ずに
  • 日々のコミュニケーション  
    – 人工内耳をつけても軽度難聴程度であることを理解し、周囲の人に助けてもらう  
    – 相手の話していることを復唱する
  • 聞き取りの段階  
    – 音の検知:音や声に気づく
    – 音の弁別:音や声の違いが分かる
    – 音の識別:音をことばとして認識し照合できる
    – 音の理解:何の音か、何を話しているかの意味が理解できる
  • 聴き取り練習  
    ①肉声での言葉の聞き取り  
    ②TVを見る(聴く)  
    ③電話を使用する  
    ④外部機器の利用   
     - 各メーカーの付属機器   
     - ストリーミング機能活用   
     - ロジャーの活用
  • 人工内耳機器修理に関する助成制度  
    – 動産保険に入っていない人が対象  
    – 2020年4月より制度が始まった  
    – 新規購入時ではなく、修理の場合に限る  
    – 修理見積書(メーカー作成)が申請時に必要
  • 各メーカー機器の紹介  
    -コクレア   
     Nucleus8、Kanso2  
    -AB   
     プロセッサ:4つのマイク   
     インプラント:ハイレゾウルトラ3D   
     ロジャーとの接続   
     両耳間音声通信   
     左側の音声を右側プロセッサで聞くことが可能  
    −メドエル   
     Sonnet2/Rond3   
     環境に合わせた制御

マッピングについて普段の心掛けについて、順を追って取組むことの大切さを学びました。装用歴2年ですが、まだまだ毎日取り組みができることがあると感じました。

医療機器の宣伝に当たることは厳しい規制があるため、各メーカ様からは取り扱い方法などについてのご説明が主体でした(折角、各メーカ担当様がいらっしゃるのになんか勿体ない・・)

  • コクレアさんによる情報提供
    – 全世界販売台数:550,000
    – 研究開発費:A$1億8千万
    – 人工内耳に影響なし  
     超音波診断、レントゲン、CT、心電図
    – 近づくと雑音がする可能性がある
     高出力のトランスシーバ、高電圧設備、空港の金属探知
    – 人工内耳のお手入れ  
     耳掛け式:電池接続部のサビができないよう手入れをする  
     毎週、接続箇所の清掃を  
     送信コイル、ケーブルを和らい乾いた布で拭く
    – 普段の使用  
     ヘアスプレー、オイル、ジェルがつかない様に  
     静電気を避ける  
     ドライブリックの交換:春〜秋初は1.2ヶ月で交換
  • 日本光電工業(AB)
    – 手入れの基本は乾燥!
    – マイクカバー交換は必須
    – インプラント種類により対応MRIが異なるので注意
    – 人工内耳装用者カードを無くした人はカスタマサポートへ
    – ナイーダCI取説はHPから取得を
    – 4つあるマイクのどれが使われているか分からない場合は問い合わせを
    – ナイーダクロス  
     人工内耳を使用していない側の音声を人工内耳側へ飛ばせる
    – 両耳装用は片方故障した際にもう片方が保証になる
  • メドエル
    – 人工内耳適正使用のために  
     人工内耳手術した人に聞くと「もっと早くすれば良かった」と聞くことが多い。小さいお子さんは尚  
    – メドエルのポリシー
     組織の温存:将来の治療に備える
     蝸牛全体を刺激する:(聞き逃しました)  
     コード化方法:より自然な聞こえ
    – 体外機器トラブルシューティング  
     電池交換  
     パーツを分解して清掃・交換  
     コイルチェッカー(プロセッサの正常動作を確認)による確認  
     乾燥キットに電池・充電池を入れないこと

西山先生、冨澤先生、各メーカー担当の方より大事なメッセージは 「人工内耳装用者として要望や疑問点などを挙げていくことが大切」
質疑応答も活発でした。ネットで個々の発信も簡単だけれども、こうした場に参加して要望など出していくことが次の人工内耳の開発や制度見直しに繫がると感じました。

  • ヒアリングループの使い方自体がわからない。ヒアリングループの使い方を教えてほしい。(講演前の周知とヒアリングループを繋げたかの確認時間が必要かな)
  • プロセッサアップグレードに関する質問あり。8%の聴き取り率の向上という適用が厳しすぎる。
  • 人工内耳の進歩が早くていつ手術すれば良いか迷う
    → 西山先生:新しいのを待つより時期を逃さないことが大切
  • 旧世代のインプラントを埋め込んでいる方は、新しいプロセッサに対応していないことが多い。これからどうなる?
    → 各メーカの対応による。インプラント再埋め込みもあるが・・

西山先生、冨澤先生、お忙しい中講演いただきありがとうございました。
また、コクレア・日本光電工業(AB)・メドエル各社様のプレゼンテーションも大変参考になりました。要約筆記を担当された皆さま、ありがとうございました。
当日の講演資料は紙(神!)資料として参加者へ配付されました。大変ありがたいことです。

過去の講演会については以下の記事を参照ください。

あわせて読みたい
人工内耳講座 東京医大・白井先生 [2024/02/03] 丸一日、白井先生の熱意溢れる大変有意義な講座でした。毎年開催されているとのことなので、これから人工内耳を検討されている方、人工内耳のリハビリをされている方に...
あわせて読みたい
耳の日 講演 東京医療センター [2024/3/3] 東京医療センター 耳の日 講演

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

通信関係の開発やってます。重度難聴で両耳人工内耳を装用しています。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • Xで読ませていただきました。
    とても分かりやすくまとめていただにありがとうございます。
    ただ一つだけ気になったことが。メドエルの紹介ではSONNET2ではなく、本国で発売されたばかりのSONNET3の紹介をされていたのでしょうか?
    というのも、もしこの時点でこちらを取り上げられていたのなら「認可されていない製品の紹介は固く禁じられています。」と言われていたアレは?…と気になりました。
    細かい指摘ですみません。

    • たまのやさん
      ご指摘ありがとうございます。私の記事の誤りでした。
      国内ではご指摘通りSonnet2までの承認となりますので、訂正させていただきました。
      (講演では「Sonnet2」として紹介されていました。)

コメントする

目次