難聴をテーマとした漫画・小説・映画・ドラマなど

サウンド・オブ・メタル ポスター

今まで私が読んだり見たりした難聴をテーマにした本や映画・ドラマをご紹介させていただきます。今は簡単な紹介だけですが、私が感じたことなど少しずつ追記させていただきます。
あなたのおススメの本・映画・ドラマもご紹介ください。

目次

「慟哭は聴こえない」丸山正樹

聾者の過酷な生活の一方で聾コミュニティであるだけで瞬時に分かり合える 絆の強さは、希薄な人間関係しかない一部の健聴者より寧ろ人間らしい。「聴こえない」は健聴者社会と言うマジョリティの中ではハンデとなるが、聾アイデンティティは強さであり光となる。

「私のいないテーブルで」丸山正樹

聾者と健聴者、異なる言語を持つ両者の間は親子関係であってもコミュニケーションを取ることが如何に大変なことか。作者は聾者自身と健聴者の家族、そしてコーダ(聴こえない親を持つ子供)を対比させることで、疎外感を持つのは障害の有無ではなくマイノリティと言う立場であるからと教えてくれる。 ろう者教育の歴史にも触れることが出来ました。学校で「周りから可愛がってもらえるように」口話を強制され健常者に合わせることが善とされる。 いつか手話を習えたらよいなと思いました。

「難聴者と中途失聴者の心理学」

聴覚障害の分類、原因、対策から始まり社会制度、教育、心理面と多岐に渡っており、どの立場の人にも大変参考になると思います。引用も豊富で深掘りしていくこともできます。中でも印象に残った箇所を2点あげさせていだだきます。

私も軽度難聴者として過ごしたこともあるのでよくわかる気がします。軽中度難聴者の方は最もストレスを抱えやすいかもしれません。『ききとれた部分をパズルピースのように組み合わせ、細かい糸を紡ぐような感覚で内容をつかんでいく、一瞬も気をゆるめることのできない、努力と集中の連続でもある。』それでも聞き取れず、自尊心が傷つく…

『大多数の軽度聴覚障害者は、健聴者の中で障害を意識せずに対等に生きていくことを望んでいる。それゆえ視線はきこえる人たちの方を向いている。重い人たちは音声によるコミュニケーションから疎外され、きこえる人たちと一定の距離を置かざるを得ない。同じ障害者の中で意識の断絶が生まれる。(途中省略)ろうの人たちは皆が等しく聞こえないのでこの断絶がない。』

聴覚障害者である自分も同じ障害を持つ人を無意識に差別したことはなかっただろうか?自問させられました。 その他、聴覚障害者でもある著者の方々の体験談も興味深く読ませていただきました。

「中途失聴者と難聴者の世界」山口 利勝

『健聴者はなぜ中途失聴・難聴者が場違いな行動などをとるのかということを理解できていないた め、原因を中途失聴・難聴者のパーソナリティに求めがちである。しかし、こういう態度こそが、中途失聴・難聴者を精神的に追い詰めてしまうのである。』

難聴者として自分が苦しんだ体験を人に説明する難しさをずっと感じてました。この本は今聞こえないことで悩んでいる方にとって福音となるかもしれません。冒頭の状況から脱するのには共感と同じ境遇の仲間との邂逅であること。納得です!

【追記】
この本の続編が「難聴者と中途失聴者の心理学」とのお話を著者のお一人でもあるみどりさんからコメントいただきました。

https://twitter.com/ikoma36sinri/status/1738840168969449626?s=20

「レインツリーの国」 有川 浩

どうしてひとみの言葉がこれほど好きなのか分かった。
彼女は―彼女たちは、耳が不自由な分だけ、言葉をとても大事にしているのだ。
第一言語として自分たちに遺された言葉を。その言葉を大事に使って、真摯に理屈を組み立てる。

昔読んだ本についてメールを交わしていくにつれて、その言葉に惹かれていく。その後、実際に会って起こる二人の間のズレ。濃密なコミュニケーションを交わしている筈の二人だが小さな蟠りはやがて大きなズレとなっていく。中途難聴者の想い、健聴者の戸惑いが痛いほど伝わってくる小説でした。私の青春もこのヒロインのようにチグハグだったな。。
参考文献として『中途失聴者と難聴者の世界』が。また全日本難聴者・中途失聴者団体連合会へのアンケート。なるほど納得の一冊でした。

この本は私が人工内耳手術を受けるきっかけとなった ぷーどる(@puudoruocarina)さんから紹介ただきました。

「”音”を見たことありますか?」 E&Cプロジェクト

1996年に出版された本ですが、難聴の子供が持つ聞こえないが故の心情は2024年の今も変わらないと感じました。テレビ字幕、スマホの音声認識、補聴器の様々な機能、情報保障、技術や社会意識は変われども、今尚あるこの閉塞感は何だろう?

この本は むささびさんから紹介いただきました。その むささびさんは ぷーどるさんから紹介されたそうです。

「目で見ることばで話をさせて」 アン・クレア・レゾット

ろう者と聴者の共通言語が手話であったヴィンヤード島に住む少女の物語。
少女が操る表現豊かな手話は、相手に気持ちを伝えることの大切さを教えてくれる。少女が受ける苦難は、偏見を捨て切ることができない私を映し出す。

「ヒトの耳 機械の耳」リチャード・F・ライオン 根本幾・田中慶太 訳

聴覚モデルを工学的に捉え解説した本。聴覚について生理学的な解説を読んでもなかなか難しい私にとっては工学への置き換えがとても好奇心をくすぐる本。 なかなか骨のある内容なので理解したところから共有できればと思っています

「聴こえの障がいと補聴器・人工内耳入門」黒田生子 編著、森尚彫 著

Q&A形式で基本的なところから説明されています。これから補聴器や人工内耳を検討される方、ご家族に私は自分の障がいや人工内耳のことを分かりやすく他の方へ説明できるように

「サイボーグとして生きる」マイケル・コロスト / 椿 正晴:訳

2001年に失聴し人工内耳手術を受けた方の私小説。人工内耳の一体験談として読んでみたら、面白い面白い!失聴時の描写から始まり、リアルな手術の描写は著者が他の方の手術に立会っての迫真モノ。音入れやマッピングで音を手繰り寄せようとする流れは、著者の難聴者としての生い立ちから、人工内耳の発展の歴史、ろう社会の葛藤、米国の文化・人種、様々なものを織り交ぜて、上質なストーリーとして仕立てられている。マッピングにおける神経可塑性の語りは体験者なら唸らずにはいられない。エンディングは『サウンドオブメタル』のモヤモヤ(私だけか?)を吹き飛ばして爽快。全ての人工内耳関係者に手にとってほしい一冊。ありがとう!P.236より少しだけ抜粋。

人工の耳をもつことになったとはいえ、ぼくは全知全能の神のような存在となったわけではないし、人間性を失ったわけでもない。それどころか、前よりも人間らしくなった。なぜなら、現実世界についてのぼくの知覚は、人間が作成したソフトウエアによってもたらされるものであり、 そのソフトウエアがときどきアップグレードされるのだから、あくまでも仮のものでしかないと常に意識するようになったからだ。ロボコップやボーグとは違って、ぼくは世界から切り離された存在ではないし、バイオメカの殻をまとった冷淡で思いやりのない生き物でもない。自分の知覚が仮のものでしかないと理解できたことで、ほくは、自分の政治的な視点も仮のものにすぎないと知ったし、人々や地域との結びつきをもっと深めようと努力することが一人の人間として自分が取り組むべき仕事だと気づいた。

読書メーター
『サイボーグとして生きる』|感想・レビュー - 読書メーター マイケル・コロスト『サイボーグとして生きる』の感想・レビュー一覧です。ネタバレを含む感想・レビューは、ネタバレフィルターがあるので安心。読書メーターに投稿された...

「人生の途上で聴力を失うということ」キャサリン・ブートン / ニキ リンコ:訳

雑誌『ニューヨーカー』の気鋭の編集者による失聴から人工内耳に至るまでの私的ドキュメンタリー。中途失聴者の苦難の歩みそのままの目次に沿って読み進めると、なんとまあ自分の人生と重なること重なること。

1 音が消えていく
2 理由を探さずにはいられない
3 騒音なんて気にしてなかった
4 隠れた障害・隠せる障害
5 隠せばよけいに悪くなる
6 補聴器、この恥ずかしきもの
7 値段が高いのには訳がある
8 人工内耳
9 リハビリ落ちこぼれ
10 聞こえるふりをして働く
11 耳鳴りと目まい
12 再生医療はいつできる

各章の終わりには様々な12人の難聴者へのインタビューがあって、これだけでも泣ける。頷ける。 本書の特徴は著者による綿密・多岐にわたる取材と鋭い切れ味の文章であり、自身の経緯と織り交ぜて様々な角度から難聴への理解を深めてくれる。

そして、著者は『サイボーグとして生きる』を何度も引用しているではないか!続編とも姉妹本とも言えるこの一冊。全ての難聴者へ届け!(最近このフレーズが多いな。。) 中途失聴者向けの本ですが、新生児のスクリーニングやろう社会、最新の遺伝子治療も豊富なインタビューを通して、学ぶこと多し!

「JOHNS 特集 ここまで進化した補聴器と人工内耳診療」

2022/1/14発売の本特集の感想をまとめていきたいと思います。
あくまでも個人的な感想であり、内容詳細は原典を参照くださるようお願いいたします。

以前まとめたNoteの方を参照ください。

「ENTONI / 248 補聴器・人工中耳・人工内耳・軟骨伝導補聴器 -聞こえを取り戻す方法の比較-」

あくまでも個人的な感想であり、内容詳細は原典を参照くださるようお願いいたします。

人工内耳 -最近の進歩-
★ ストレート電極:蝸牛外側壁に沿って挿入されるので低侵襲。modiolar電極:ラセン神経節細胞と電極の距離が短いためより少ない電流で神経を刺激できる
★ メドエル FLEX28,FLEX soft 正円窓アプローチで挿入すると90%以上の患者で何らかの音感を残すことができた
★ cochlear slim modilar電極は外側壁及び蝸牛軸のいずれにも接触しない構造で残聴の温存率が高い
★ 音声コード化 
– AB社 電流方向を制御して複数の電極に電流を流すことで仮想的に120個の電極を作り出す
– medel 基本周波数を算出しそれに合わせた頻度で電極を刺激するのでピッチ認識に貢献する
★ 人工内耳の聞こえの特徴とは?
著者は言語習得前難聴の方で20歳で片耳、13年後に両耳装用者。人工内耳による聞こえ方の表現、マップ(22電極のT/C & DR)の初期/2年半後の比較図、閾値検査、語音聴取成績など、自身の聴力を取り戻した過程が数値化され分り易い
★ 補聴器と人工内耳の聞こえの特徴に関する経験と考察
– 著者はご自身でも人工内耳手術を手掛ける神田先生
– 23歳で難聴、43歳 CI メドエル
– 健聴時と同じく自然に聞こえる
– 音楽は最初はわからなかった。5年過ぎてから楽しめる様になり、10年で良く聞こえる様になった。高頻度刺激が音楽に有用なのかも
★ 目の前の補聴器の患者にどのようなケースの場合、人工内耳を勧めるか
– 重度・高度難聴の補聴器ユーザ毎に、補聴器を継続 / 人工内耳を選択した各症例を長いスパンで経過観察しているため、これから人工内耳を検討する方に参考になる
– 最高語音明瞭度 50%が検討に際してのキーなのかな?

「脳の地図を書き換える」デイヴィット・イーグルマン

人工内耳で何故最初は声として聞こえなくても、徐々に聞こえるようになるのか。「脳の可塑性」について、理解を進めることができました。

「可塑性とは外部の変化に応じて自らを変えていく力」であり、私たち人工内耳装用者は、それをいかんなく発揮してきたのだと。

聴覚を司る脳の領域である聴覚野は聴覚野ありきではなく、実は耳と繋がっているから!脳は繋がっている器官に応じて得られる電気信号を処理するなど、私にとって驚くべき事実が次々と。。

引用ばかりで全文紹介になりかねないので最後にもう一つだけ

「脳は外界に対して内部モデルを構築する。そして外部で起きることに対して予測し、予測が外れたときだけニューロンは発火し内部モデルを更新する。これにより脳の消費エネルギーを節約する。」
下記記事と結びつきました!

サウンド・オブ・メタル

暴力的な音の洪水から音のない静寂な世界迄を主人公は虚い彷徨う。難聴者の聴こえの現実を、音と映像によるコントラストで残酷なまでに表現されている。失聴して再び音を取り戻そうとする主人公は最後に自分を取り戻せたか、ラストは観る人の置かれた立場の数だけ様々な受け入れ方があるだろう。

【参考】ダリウス・マーダー監督へのインタビュー記事

Audiology Worldnews

ドラマ

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この記事を書いた人

通信関係の開発やってます。重度難聴で両耳人工内耳を装用しています。

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